大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和44年(ネ)323号・昭44年(ネ)322号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件交差点は交通整理が行われていない見通しのきかないものではあるけれども、被告車の通行する市道は幅員11.4メートル、これと交差点する原告車通行の県道は幅員4.4メートルであつて、被告車通行道路の方が原告車通行道路よりも明らかに広いから、被告車には道路交通法第三六条により優先通行権が認められ、被告車を運転していた第一審被告繁田は、同法第四二条所定の徐行義務、すなわち直ちに停止することができる速度で進行(同法第二条第二〇号)する義務を負わない筋合であり、このことは軽四輪車の左折により東方道路の見通しが一層きかなくなつていたとしても別異に解すべきではなく(最高裁判所第三小法廷和年四五年一月二七日判決)、かえつて狭い道路を通行していた原告車のみ徐行義務があつたものというべきではあるけれども、このことは、被告車が徐行しなかつたことの一事をもつて、その運転者である第一審被告繁田に過失ありとすることができないということを意味するにとどまり、このために同第一審被告が本件交差点に差しかかつた際、東西道路から交差点内に進入する車両がないかどうかをたえず注意し(左右の安全確認)、もしこれを発見したときは直ちに適切な対応措置をとり、もつて事故の発生を未然に防止すべき注意義務まで否定されるというわけのものではない。

二、右損害についての過失相殺

第一審原告賢一(編注、死亡被害者の相続人・父)は、葬儀費のような積極的損害については過失相殺の対象とすべきでないと主張するけれども、本来、過失相殺は、不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり、公平の見地から、被害者にも過失がある場合にこれを斟酌して、賠償義務者が負担すべき賠償額の軽減を考慮しようとするものであつて、被害者にも過失があるのにかかわらず賠償義務者になお全損害の賠償を命じることが、公平に反する結果となることは、その損害が消極的損害の場合ばかりでなく、積極的損害の場合でも異るところはないから、積極的損害については過失相殺の対象とすべきではないとの同第一審原告の主張は採用できない。

そして、右入院治療費一四、五九〇円及び葬儀費二二八、二一五円(合計二四二、八〇五円)は、同第一審原告個有の損害であり、同第一審原告には本件事故の発生につき過失があつたことの主張立証はないが、死亡した保に過失があつた以上、民法第七二二条第二項にいう「被害者ニ過失アリタルトキ」に当るものと解すべきであるから、保の前示過失を斟酌すると、被告車がマイクロバスであり、原告車が自動二輪車であることを考慮しても、第一審被告会社及び第一審被告繁田が賠償すべき額は、その三割に相当する金七二、八四一円(円以下切捨)をもつて相当とする。(宮川種一郎 竹内貞次 平田格)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!